拾い恋(もの)は、偶然か?




「俺がなんで親切に教えてやってるか、教えてやろうか?」


突然そう言った衛は、頬杖をついていやらしく笑う。


「乗り換えない?俺に、ってこと。」

「は?」


突然の提案はあまりにもくだらなくて、ほんの少しすら心が動くことはない。だけどなぜか、衛は自信たっぷりの様子。背を椅子に預けて、余裕の態度を示した。


「うちは2人兄弟なわけ。兄さんが後継者から外れたってことは、俺が次期社長。兄さんがあの会社で働いてるのも、いずれ俺を補佐するよう親父に命令されたからだしな。だから音ちゃん、俺に乗り換えなよ。将来俺の補佐止まりの子供すら作れない兄貴より、将来社長の、子供なんて望むだけ産ませてあげられる俺の方が、得だろ?」


「っっ、」


なんて気分の悪い話なんだと思った。吐き気までする。

私がそんな女に見られているのはまだいいとして、衛の中に、兄としての部長に対する尊敬の念なんて全く見えない。父親自らが、部長にそうするように言ったのかは分からないけど、子供ができない体なだけで、こんな扱いを受けるなんて。


--- 一体、いつの時代の話よ?



部長も、表情を険しくしているだけで、私の方を見ようともしない。


情けないと思う。だけどきっと、そうなるように"仕向けられてきた"んだと思う。


家族から、こんな仕打ちを日々されてきたのだと思うと、私なら洗脳みたいにこうなっちゃうと思うから。




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