拾い恋(もの)は、偶然か?




「それじゃ音ちゃん、考えといてね。」



言うだけ言って満足したのか、固まる私を前に名刺を置いて、衛は帰っていった。



そして残されたのは、最悪の空気と私たち。


衛は嵐というより、中途半端に豪雨を降らせた通り雨のようだと思った。思い切って濡れて帰ればいいやと思ったのに家に着くころ、ちょうど止んでしまうような、そんないやらしい雨だ。


気分は最悪。そして、部長の表情も。

さっきまでお肌艶々でニヤついていた幸せそうな顔も、一気にどん底まで落とされてしまった、という感じだった。



「情けないですね。」

「っっ、音。」


呟けば、部長が縋るような目を私に向ける。ここまで来てまだ何も言えずにいる部長はほんとに女々しい、最悪。情けない。


なのに。


「それでも俺についてこい、くらい言えないんですか?」


部長の手を取れば、強く握り返してくる。体はこんなにも正直なのに、この人は。


実際私が、俺についてこい、なんて昭和みたいなセリフを突然吐かれたら、どこまで?公園?なんて鼻で笑ってしまうかもしれない。


だけど、言ってるでしょ?


部長ならなんでも歓迎よ。別れる以外はね。


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