拾い恋(もの)は、偶然か?
どうやら私の彼氏様は、ヘタレで、そう簡単に人を信じられるほど素直じゃないらしい。
「へへ。」
「……音?」
怪訝な表情のこの人は、私をまだまだ心から信じきるということができないらしい。それはきっと、年月が解決してくれることではなく、もっと根本的なものなんだと思う。
「翔吾さん。」
「え?」
なら、しょうがない。
「これから、そう呼びます。」
「いや、でも音。」
私が、馬鹿なくらい、司馬翔吾を好きでいればいいんだ。
真正面から翔吾さんに抱きついて、甘えてみるけど、恥ずかしさが邪魔をして、なんとなくぎこちない。
「音。」
慌てる翔吾さんの声も無視して、頬にキスをした。寝起きなせいか、顔に髭が当たって痒い。
強く抱きしめれば、翔吾さんはおずおずと背中に手を回して抱きしめ返してくれる。こんなにも素直で、こんなにも臆病な、可愛い私の恋人。
怯えるこの人に信じてもらうには、私がまず、表現してあげないと。
強がって、怖がって、私はラインを引いてこの人と付き合ってきた。それを取っ払わないと、この人の疑心は打破できない。