拾い恋(もの)は、偶然か?
「……。」
「なによ?」
この人の彼氏が……あの衛。
「趣味悪。」
「なんか、凄く貶されてる気分なんだけど。」
コーヒーを飲む所作すら綺麗なこの人は、うちの会社の秘書課にいるだけあって滅茶苦茶美人だ。もちろん、翔吾さんの隣に並ぶのもさまになるほどの美貌に、彼氏になりたいと思う男性はたくさんいるだろうと思う。
「昨日、翔吾さんの家でまも……司馬さんにお会いしました。」
「え?司馬?」
この人は、肝心な時に察知が悪い。だけどそれがすごく可愛く見えてしまうのが悔しい。
「どの司馬?」
「衛。」
「はぁ?」
翔吾さんの家で会う司馬といえばほぼ家族だろう。まも、まで言ったんだからそこは真っ先に衛を思い浮かべてもよさそうなものだけど。どうやら考えてもいなかったらしく、ものすごく驚いている様子。
「松崎さん、なんであっちに乗り換えたんですか?」
「……はっきり言うわね。」
素直に頷いた。松崎さんに取り繕ったところで、今更な気がする。この人がお昼休みで散々、鳴海先輩や私の暴言を軽くスルーするのを見てきたのだから。
そこは笑顔の秘書課。恐らくどんな状況でも笑顔で乗り切るスキルを持っているんだろう。