拾い恋(もの)は、偶然か?
「まぁ、でもそうね。翔吾」
「部長呼び、固定でお願いします!」
「っっ、めんどくさいわね。」
顔を顰めた松崎さんに、名いっぱいの眼力で応戦した。ここは譲れない。私は意外と気にするタイプだ。
「わ、分かったわよ。目が怖い目が。」
どうやら折れてくれたらしく、一息つくように松崎さんはコーヒーを一口飲んだ。この間私が真似して翔吾さんにやってみたら、全然気付かれなかった奴だ。
「まぁ、とにかく司馬部長がどうだろうと、私には関係なかったわけ。だから気にする気も起きなかった。ただそれだけよ。」
「……どういうことですか?」
少しだけの興味だった。松崎さんがなぜ衛を選んだのか。そりゃ、お金と将来性が大部分だろうけど、気持ちはまだ、翔吾さんにあったと思うから。
「結婚なんて、程遠い関係だった。私が彼をどれだけ好きでも、遠い存在だった。」
だけどそれは、松崎さんの心を抉る行為になっていない?
いつも強気で自信に溢れているこの人がこの表情をするのは二度目だ。一度目は私と初めて会った時。エレベーターフロアで。そして今は。
「すみません。」
「ん?謝るなんて古蝶らしくないね?」
明らかに私が、そうさせてしまった。