拾い恋(もの)は、偶然か?
「あの人もね、可哀そうな人なのよ。」
だから、分かってあげて、とは続けないのが、松崎さんの良いところだと思う。この人は自分の価値感を相手に押し付けはしない。恋愛で利益を考えて、ちょっぴり性格が悪いけど。結局この人だって、心で恋愛している。
「松崎さんらしくしてればいいんじゃないですか?」
「私らしく?」
なんだか、松崎さんの言い方や、衛の態度から感じたのは、なんとなくの、ぎこちなさ。
「猫っかぶりしてるんでしょ、どうせ。」
「……失礼ね。」
仕事中の松崎さんは、まさに猫っかぶりの真っ最中で。たまに仕事中に遭遇すると、別人かと思うほどだ。
才色兼備の美人秘書。凄く気が利いて、得意先の幹部のおじさんたちだって鼻の下を伸ばしてる、そんな感じ。
それがまさか、『お金が欲しいー!』なんて、昼休みに叫び出すような人と同一人物だとは、誰が想像できるだろうか?
「松崎さんなら、衛が変な行動したらお尻でも叩きそうなのに。」
「ほんとにさ、古蝶の中の私、どんな人になっちゃってるの?」
「美人な怪獣。」
「当たってるわ。」
お互い、ニヤリと口角を上げた。