拾い恋(もの)は、偶然か?
「ああ、どうぞ。」
「ありがとうございます。」
それを松田部長に手渡せば、なぜか2人は私をジッと見つめっぱなし。
「何か?」
「いや、」
「別に。」
なぜか2人とも歯切れ悪くて、なぜか分からずに混乱してしまう。
さっきから、間合いを埋めるように何度も口に運ぶファジーネーブル。飲みすぎて空になってしまった。
「音、次何飲む?」
「ファジーネーブルで。」
「分かった。」
司馬部長がいつものへたくそな笑顔で傍を通った店員に手を挙げた。
「はいっ、お伺いします!」
バイトの女の子が目をキラキラさせて元気よく近付いてくる。可愛いな。きっとかっこいい人がお客さんでテンションもアゲアゲなんだろう。
……それを接客態度に出すのはどうかと思うけどね。
「ビール2つにファジーネーブル。あ、鳴海君は?」
「あ、大丈夫です!」
「そ。料理は後から決めるから。まずはそれで、ごめんね?」
そしてさりげない気遣い。付き合いが長いせいか松田部長の好みも分かっているらしい。私が聞いた意味よ、マジで。
「いえ!ご注文を繰り返します!」
それに対応する女性店員。うん、この繰り返す下りのやつ、私と鳴海先輩の時のトーンとまったく違うような。
「はい、はい。大丈夫、ありがとう。」
「いえっ、とんでも!すぐにお持ちします!」
あらら、女の子。多分女子大生かな?胸の名札に”みゆ”なんて可愛らしい名前が書いてありますね。背中に羽が生えてるみたいに足取りが軽やかだよ。
「さて。」
女の子が行ってしまって、司馬部長はにこやかに私を見た。
「音、食べ物は?奢ってあげるよ。」
「……要りません。」
”みゆ”ちゃんに愛想振りまいてた人なんかに奢ってもらったりしたら、女が廃る。