拾い恋(もの)は、偶然か?
「当分恋愛はいいと思ってたんだけどねー。」
「え?」
鳴海先輩は、親子丼をもう一口、口に入れる。
「浮気されちゃって。」
「彼氏に?」
頷いた先輩。笑顔なんだけどその表情は酷く悲しそうだ。
信じられなかった。先輩と彼氏さんは同棲もしていて、付き合いも5年以上と聞いてる。この間まで冷蔵庫のプリンの話で喧嘩してて、いずれ結婚すると聞いていたのに。
「へー。相手の女は?どんなの?」
俯く先輩に、松崎さんがそう問いかける。本当に、遠慮という言葉を知らないらしい。
「松崎さん、いい加減に」
「会社の後輩だって。よく笑う子で甘え上手で。仕事で振り回されてる内に自然と好きになってたって。」
「なにそれ。」
先輩の震える声に、胸が痛んだ。俯く先輩は今、泣いているかもしれない。どうしよう、こんな食堂のど真ん中で注目を浴びてしまうかも。だけどそれくらい、悲しみが深いんだろう。
「馬鹿過ぎない?」
追い打ちをかけるような松崎さんの呆れの言葉が、鳴海先輩に容赦なく突き刺さる、はずだった。
「でしょ?クソかと思ったわ。」
「……へ?」
握りしめたスプーンごと、鳴海先輩は食堂のテーブルを大きく揺らした。その振動がすさまじかったからか、少し離れて座っていた男性社員のうどんの汁が零れている。