拾い恋(もの)は、偶然か?



「ミスが多かったのは彼女の問題だろ。俺は打診をしただけ。それを承諾したのは営業部。俺はほぼなにもしてないよ。」

「……。」


部長の笑みに、「そっかー。」なんて表情をしている人は誰もいなかった。打診という言い方は聞こえはいいけど、私的に絶対裏に多大に含まれている何かが見えて仕方がない。

「総士さんには感謝してるよ。無理聞いてもらっちゃって。」


うどんをもぐもぐさせながら、部長はニッコリ、そう言った。もはや何も言うまい。この笑顔の裏の何かを本能で感じ取ってしまったから。


「もうそういうことにしとけば?この人の腹黒さを考えてたらきりがないから。」

「それは聞き捨てならないな、松崎さん。」

「あら。私何か言ったかしら?」

元カップルの2人。目からビームを出し合っているように見えるのは気のせいだろうか。


「大体、無神経なのよね。元カノの前でいちゃいちゃしちゃって。」

「悪いね。音があまりにも可愛いもので、つい。」


開いた口が塞がらないとは、このことなんじゃないだろうか?ポカンと口の開いた私たち3人を前に、部長は順調にうどんをお腹に入れていく。

どうやら松崎さんの挑発も、部長の天然には効果はないらしい。






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