拾い恋(もの)は、偶然か?
「偶然ですよ、偶然。つけたわけでもないです。」
「……。」
疑いの眼とはこういうことを言うんだな。信頼ゼロの松田部長の視線を浴びて、苦笑いが零れた。
まぁ確かに、松崎さんはめちゃめちゃ面白がってたけど。彼女の身の安全のためにそれは黙っておこう。
「鳴海はもうすぐ落ちる予定なんだ。邪魔すんなよ。」
「落ちるとか落ちないとかそういう言い方やめていただきたいですね。」
「は?」
松田部長とそんなに話した記憶はないけど、数少ない会話だけでも、この人は少々言葉選びに難があると思う。
真剣に恋愛をしようという相手を、落ちる、落ちないなんて、まるでゲームのような言い方で表すのは好きじゃない。
「私が口出すことじゃないですけど、先輩は今傷ついてるんです。遊びなら殴りますよ。」
「だから、なんで暴力に飛躍するかね?お前は。」
松田部長をジッと見つめた。殴る殴らないは冗談にしても、おせっかいかもしれないけど、鳴海先輩にはもう傷ついてほしくはない。
いつも笑ってた先輩が、今まともに泣くことすらせず仕事に没頭している。先輩は最近、あまり笑わなくなっていた。
その原因は、十中八九元カレの浮気のせいだろう。