拾い恋(もの)は、偶然か?



「大事な先輩なので。」

「そうだ。音の大事な先輩なんだから。分かった?総士さん。」

「えっ。」


立場上、電話で退室することが多いだろう翔吾さんは、こうして音もなく部屋に戻るスキルを手に入れているらしい。

とりあえず心臓に悪いからやめてほしい。


「なんでたよ。俺の女になった方が幸せだろ?」

うん。なんていうんだろう。

どっから来るの?その自信。


「……なんだよ?」

「いえ、別に。」


松崎さんといい、鳴海先輩といい、なかなか厄介な男たちが相手だ。その点、私の翔吾さんは可愛いからなんでも許せてしまう。


「音、デザート、楽しみにしといて。」

「うわ、なんだろー。すごく楽しみになってきました!」

「お前ら、俺の存在を無視すんなよ。」


私と、鳴海先輩と、松崎さん。境遇も年もなにもかも違うけど、恋愛をしているということだけは同じ。今後私も翔吾さんとどうなるかは分からない。

鳴海先輩だって、松田部長と付き合うかもしれない。松崎さんだって、衛と別れるかもしれないし、結婚まで行くかもしれない。


誰も、人の気持ちは操作できないし、たとえ本人でも自分の恋愛は予測不可能だ。


その中で私たちは、なるべく自分が傷つかないように動く。それは年を取ればとるほどそう。

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