拾い恋(もの)は、偶然か?
[今日、お昼一緒に食べよう。]
何も知らない翔吾さんが、帰社早々こんな社内メールをよこしてきた。
[職務中ですよ、部長。]
[音は厳しいな。]
[厳しいとかの問題じゃありません。]
[これが生きがいなのに?]
「……。」
翔吾さんの、あのデレデレの笑顔を壊してしまうと思うと、やっぱり社長のことは言えない。
このまま、私が何も言わないままで穏便に済むわけはないと分かっていてもやっぱり、言えなかった。
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「よう。」
「松崎さんなら、もう帰ったんじゃない?」
翔吾さんが仕事で一緒に帰れない日。会社を出た私の目の前に衛が現れた。
「お前に用がある。」
「私にはないんだけど。」
いつになく真剣な表情で私の手を握って止めた衛の手を払って歩き出せば、当たり前のようについてくる。
「ついてこないで。」
「話を聞けよ。」
翔吾さんのいないところで衛の話なんて悠長に聞いてられない。だってまだ翔吾さんを傷つけようと画策してるかもしれないもの。
「兄貴の、話だ。」
なのになぜか、衛の真剣な表情は初日に会った時のような嫌な印象は受けなかった。