拾い恋(もの)は、偶然か?



「色々、考えたんだ。」


私をまっすぐに見つめる翔吾さんは、薄暗い寝室でも輝いて見える。大切な人。そして、とても傷だらけの人。

私の人生で、こんなに好きになった人はいない。


きっかけなんてない。あの会社に入って、この人を見た瞬間、私は一瞬で恋に落ちた。


誰もが恋してしまう翔吾さん。家柄も完璧で、次期社長候補とまで言われているほど、仕事ができる。容姿も、行動も、なにもかも、粗がないほど完璧。


だけどそんな翔吾さんは、家族に疎まれ、自分を責めて、傷つきボロボロになっても笑顔で生きてきた。ネットショッピングが苦手で、なぜか同じ物を何個も頼んじゃうドジもするし、実はキャビアとかフォアグラとか、高級食材が苦手。


お酒はワインよりビール派。お気に入りのおつまみはモツ煮込み。


まだまだ若い32歳の翔吾さんが、意外とおじさんくさいのを知ってる。


「だけど、音にプロポーズするなら、よく雑誌とかに載ってるみたいな豪華で感動的なサプライズじゃなくて、シンプルなものの方がいいと気付いたんだ。」


だけどこの人は、きちんと見てくれている。


古蝶音という、自分の彼女のことを。



< 255 / 288 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop