拾い恋(もの)は、偶然か?



「全然大丈夫ですよ。」


そんなことはないのに。臆病な人。


だって私は決めてしまった。


司馬翔吾という臆病で、傷だらけのこの人に、なにがあってもついていこうと、決めてしまったから。



「ほんとに?」

「当たり前です。」


胸をトンと叩いてみせた。

それなのに翔吾さんは心配そうに私を見ていて、下がる眉を見ていると思わず、笑みがこぼれる。


「音。聞いて。」


そんな私をたしなめるように、翔吾さんは私の手を強く握った。その表情は真剣そのもの。だけどどこか悲しそうに見えるそれを見て、張り裂けそうなほどの胸の痛みを感じた。


翔吾さんの頬に手を滑らせれば、翔吾さんは目を閉じてすり寄ってくる。ああ、こんなにも、可愛い人を、こんなになるまで傷つけ、悲しませるなんて。



「翔吾さん。私は大丈夫ですから。」

「そんな簡単なものじゃないんだ。」



自分の結婚を、ご両親に素直に喜んでもらえないことは、とても悲しいこと。それだけじゃなくこの人は、いままで自分自身を否定され続けてきた。


相手が私だからというのもあるだろう。だけどそれだけじゃない。きっと私じゃない誰かだとしても、この結婚は困難なものになったのだと思う。



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