私の本音は、あなたの為に。
そう心の中で答えながら、実際の私は真顔で頷く。


「うん。亡くなったよ」


自分の声が、恐ろしい程冷たく聞こえた。


「そうだよね?…じゃあ、何で優希ちゃんのママは…」


「大ちゃん、聞き間違えたんじゃない?」


私は、大ちゃんの言葉を遮る。


元々洞察力が鋭い大ちゃんなら、私の秘密にも感づいてしまいそうで。


「えっ?いや、そんな事無かったと思うけどな」


「えっ、絶対そうだよ。だってお兄ちゃんはもう居ないんだよ?」


私は、半ば強引にそう伝える。


「うん…分かってるんだけどさ…」


大ちゃんは、納得のいかない表情をしながら腕を組んだ。


「何でだろ。優希ちゃんのママ、絶対に“勇也”って言ってた気がするんだけどな」


「そんな訳…。だって私、優希だよ?1文字間違える事くらい、よくあるよ」



いや、あるはずが無い。


亡くなった人と生きている人の名前が混同する事など、滅多に無いはず。


(ああ、ばれちゃうよ)


久しぶりに会った幼馴染み。


もっともっと、沢山話したいけれど。


この事だけは、話せない。


「えっ、そうかなー?」


大ちゃんは、不思議そうに首を傾げ、歩みを遅めた。


けれど、私は大ちゃんを待たずにずんずん進んで行く。


どちらにせよ、大ちゃんが私の後をついてくる事は分かっているから。
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