私の本音は、あなたの為に。
そして、そのまま坂道を登る事数分。


「あっ、そういえば勇也」


不意に、大ちゃんが私を呼んだ。


「何?」


私は振り返る。


そして。


(あっ、やばい…!)


私の顔から、血の気が引いた。


立ち止まって私を見ている大ちゃんの顔も、青ざめていて。


「嘘、でしょ……?」


彼の掠れた声は、そのまま空へ消えていった。


「大ちゃん、今のは違うの!…その、言葉が似ていたから、つい…」


何というミスを犯してしまったのだろう。


大ちゃんは、意図的に私の事を


『勇也』


と呼んだ。


大ちゃん自身の疑問を、解決する為に。


私が、振り返らなければ良かったのに。


私は、それが当たり前の様に振り返ってしまった。


家でのママとの会話と何ら変わりの無い様に、返事までしてしまった。



「…優希ちゃん、本当なの?」


大ちゃんには私の必死な声が聞こえないのか、ただ呆然とその場に立ち尽くしていた。


「ううんっ、そんな事ない!…私は、違うから!」


「何が?」


間髪入れずにそう聞かれ、後ろ向きに歩いていた私は思わず立ち止まる。


(何がって、何が?)


大ちゃんは、呼吸を落ち着かせながら説明する。


「俺、何も言ってないよ…。ただ驚いただけなのに、何が“違う”の?」


「っ……」



私は、堪らず俯いた。
< 142 / 309 >

この作品をシェア

pagetop