私の本音は、あなたの為に。
私が兄のふりをしていると確信した大ちゃんは、いつの間にか自分を責め始めていた。


「俺が日本に居たら、優希ちゃんのママに言えたのに…。怖くて言えなかったでしょ?…ごめんね、本当に」


大ちゃんは伏し目がちになり、自分の所々茶色に染まった髪の毛をもどかしげに掻き回した。


自分が怪我をしなければ、渡米をしてまで手術をしなければ。


私がこんな状態にならなかったと、大ちゃんはそう思っているはず。



「大ちゃん……」


私は、また歩き出しながら言葉を絞り出す。


「…えっ?」


今度は髪の毛を引っ張りながら私の隣に並んだ大ちゃんは、我に返った様に私を見た。


「大ちゃんは、悪くないよ」


「!?」


大ちゃんの目に力が帯びる。


“優希ちゃん、何言ってるの!?”


そう、彼の目が訴えていた。


「大ちゃん、考えてみて」


ショックを受けている大ちゃんとは対照的に、私はとても落ち着いていた。


「ある日、自分の親が自分の事が分からなくなっていたら、どうする?」


「えっ…?」


大ちゃんは、言葉を無くす。


それが、私の体験した話だと分かっているから。


「…しかも、親は自分の兄の事しか記憶に無かったら、どうする?」


「……それって、優希ちゃんのママは優希ちゃんの記憶が無いって事…?」
< 144 / 309 >

この作品をシェア

pagetop