私の本音は、あなたの為に。
大ちゃんの疑問を、私は見事にスルーして話を続ける。


「…それで、親から見た子供は兄だけで、もう1人の子供のはずの自分の事を忘れていたら、どうする?」


「っ…優希ちゃん」


私は、震える唇を強く噛み締めて言葉を絞り出す。


「そしたらさ……、親が唯一覚えている兄になりきろうって、思わない?」


「っ……」


「私は、なりきろうって思った」


慰める言葉を失い、何か代わりになる言葉を探している大ちゃんに向かって、私は乾いた笑みを浮かべる。


「だって…ママは、私の事を覚えていないんだよ?…それなのに、無理矢理思い出させるのは…辛いよ」


辛くて、怖い。


その後の事を考えると、今でも背筋がぞくりとする。


(大ちゃんなら、分かってくれるかな…?)


(母娘でおかしい人だって、思われないかな…?)


私の事が分からないママはさておき、のうのうと兄になりすます私をどう見てくれるのか。


それに、今後の私と大ちゃんの友情が懸かっている。



「優希ちゃんのママ…、記憶障害なの?」


結局、悩んだ挙句に大ちゃんが発した言葉はそれだった。


「…分からない。でも、そうなのかも…」


「え、知らないの?自分の母親が今どんな状態なのか」


言葉を濁した私に向かって、大ちゃんが畳み掛ける様にして尋ねてくる。
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