私の本音は、あなたの為に。
「病院には行ってないの?」


精神科とか脳外科とか、何でもいいから行ってないの?


そう聞いてくる大ちゃんの目は、必死だった。


私の様子を見に高校まで来たら、数年ぶりに会った幼馴染みに受け止め切れないような事を告げられるのだ、無理もない。


大ちゃんだって、必死に心の整理をしているだろう。


だから、がむしゃらに情報を集めて私の力になろうとしてくれているのかもしれないけれど。



「病院、行ってない…怖くて、行けなかった…」


私の返答は、アドバイスをする為に情報が必要な大ちゃんを落胆させるのにぴったりで。


もう既に全てを諦めている私は、情報があっても得はしないのだけれど。


例え病院に行ったとしても、ママが私のことを分かってくれるのかは分からない。


そこでも、抗えない現実を突き付けられるのは嫌だから。


私は、ただただ現実と大ちゃんから目を逸らし続ける。


「病院にも行ってないの?…じゃあ、何をしてたの?」


大ちゃんは、胸元に掛けていたサングラスを頭の上に乗せながらそう言ってきた。


(そんな事、言われても…)


『ずっと、ママの笑顔を見る為にお兄ちゃんの演技をし続けてきたんだ』


言える事は、これしかない。


けれど、大ちゃんがこの返答を望んでいない事は分かっていて。


それでも、他の行動は怖くて出来なかったから。
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