私の本音は、あなたの為に。
誰かに助けを求める事すら、困難だった私。


日陰と日向なら日陰に位置する私が、日向に居る大ちゃんの満足する様な答えを言えるのは到底無理な事で。


もちろん、こんな私は日向に行くことも出来ない。



「……分からない…」


私が出した答えは、これだった。


「えっ?」


元々右半身を怪我していた大ちゃんは、坂道を歩くのが辛くなってきたのか、顔を顰めながら顎を滴る汗を左手で拭って聞き返してきた。


「私、大ちゃんみたいに強くないから……」


私はそこで言葉を切り、大ちゃんを見つめる。


「私だって、現実逃避をしたかった……」


その言葉を聞いた大ちゃんは、今までの迫力は消え失せてまじまじと私を見つめてきた。


私が逃げていた理由は、大ちゃんと同じなのだ。


「ママは、私の前では笑ってくれなかったっ…!…でも、ママは、私がお兄ちゃんになると笑ってくれたっ…!」


初めて兄の演技をした時のママの笑顔は、これからもずっと忘れないだろう。


と言うより、誰の子か知らない少女の前でにこにこと笑える方がおかしいのだ。


「……ずっと、演技をしてた…」


これしか、言える事はない。


「…そっか…。これから病院に行く予定はないの?」


大ちゃんは、諦めずに私に聞いてくる。


「……分からない」


私の答えは、先程と同じ。
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