私の本音は、あなたの為に。
(眠いのかな?)


私は、そんな五十嵐を見てそう考える。


(なら、そっとしておこう)


私は緩く笑い、花恋の方を向いた。



花恋と共にピアノの本を探す事、十数分。


「あっ、これじゃない?」


私は、ようやく目的の本を見つける事が出来た。


「えっ!?…あっ、そうそう!これだよ!ありがとう!」


顔をほころばせた花恋は、私の手を握ってぴょんぴょんと飛び跳ねる。


「この本私の家に無くて、先生の家にはあったんだけど、貸してもらえなくて…。だから、見つかって良かった!」


よほど嬉しかったのだろう。


花恋は、見つけ出したピアノの本を大切そうに抱きしめた。


「これと…あとこれ。借りてもいい?」


花恋は新たに本を見つけ、合計2冊の本を私に差し出してくる。


「うん。じゃあ、カウンター行こう」


その言葉を聞くやいなや、花恋は弾丸の様なスピードでカウンター席まで走って行ってしまった。


「ここからカウンターまで、そんなに距離は無いのに…」


私は苦笑し、急いで花恋の後を追いかけた。



花恋は貸出用の紙にいそいそと自分の名前を書き、本のバーコードの部分を表にした。


「これで、本を借りれるんだよね?」


「うん、そうだよ。…安藤、俺やるから」
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