私の本音は、あなたの為に。
「はい、勇也。これ、後で着てみて。勇也がこの洋服を着ている姿を早く見たくて」


ママは、本当に嬉しそうに笑った。


それは、私と2人きりだった2週間前からは絶対に見せたことのない笑みで。


見ているだけで、ママが本当に幸せなのが伝わってくる。


けれど。


(夢なら早く、覚めて下さい)


私はこの現実を受け止めきれない。


何故なら、私は優希だから。


もうすぐ反抗期や思春期の訪れる中学生の女子に向かって意味不明な発言をされると、普段よりも多くストレスが溜まってしまう。


(また、いつも通りのママに戻って下さい)


明日の朝になれば、この悪夢はすぐに覚める。


そう、馬鹿みたいに思っている私が居た。



次の日の日曜日。


「おはよう、ママー」


いつもより少し早く目覚めた私は、朝ご飯を作りながらテレビを見ているママの元へ駆け寄った。


「今日は早いじゃない。おはよう、勇也」


(えっ……?)


私は、ママの顔を穴の開く程見つめて固まってしまって。


(まだ、勘違いしているの?)


「ママ、私は勇也じゃないって…!」


私は昨日と同じ様に、ママにそっと訴えた。
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