私の本音は、あなたの為に。
私の事を兄と捉えているという事は、私の事が分からないという事。


(なら、私はどうすればいいの…?)


『ママ、優希の事を忘れたの?私は、優希だよ』


たった一言のその言葉が、私には言えない。


これは、ドッキリではない事はもう分かっている。


もしも、ママの記憶から私の記憶がすっぽりと抜け落ちていたら。


私はショックで、きちんと自分の感情を保てないかもしれない。



私の事が分からなくて、それに加えて勇也だと思っているママ。


そんなママの為に、私は…。


(ママが私の事を分かってくれるまで、お兄ちゃんになろう)


それが、勇気の出ない私の最善の策。


自分に悪影響が及ぼされる事を必死に避けた、結果。


この行動をする事によって、ママがいつか変わってくれるかは分からないけれど。


いつか、私の事を“優希”と認識してくれるのかも分からないけれど。


昨日からずっと、知らない大人と接しているようだった。


話している人はママなのに、ママは私に重ねた誰かと話していて。


私には、見向きもしなくて。


それが本当に辛くて、悲しくて。


いくら中学生といっても、実の親に自分の存在を忘れ去られるのはとても怖い事で。
< 66 / 309 >

この作品をシェア

pagetop