私の本音は、あなたの為に。
ならば、私に残された方法はこれしか無い。


“ママの中に唯一残っている、お兄ちゃんになる事”


そうすれば、きっとママは私を見てくれる。


偽物の私でもいい。


私の事を見てくれないのは、嫌だ。



「……いいよ、マ…じゃなくて、母さん。髪の毛、切りに行こう」


「ええ!じゃあ、いつもの行きつけの美容院に行きましょう」


私の言葉に、ママはまた振り返って笑ってくれる。


そんなママを見て、私も笑顔を見せた。


もちろん、作り笑顔。


勇也は、“ママ”では無くて“母さん”と呼んでいた。


(だから、私も“母さん”って呼ばなきゃ…)


私が勇也になる為には、些細な事から変えていかなければいけない。



ママの、あの笑顔を見る為なら。


ママの、あの鈴の鳴るような笑い声を聞けるなら。


ママの、優しい微笑みを見られるなら。


私は、私を犠牲にしても構わない。


家の中では“優希”を閉じ込めてもいい。


ママが、私を見てくれるのなら。


それが、“嘘”でもいい。


全ては、


『ママに見てもらいたい』


その一心で。
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