私の本音は、あなたの為に。
胸が、痛い。


花恋になら、ママの異変を言えると思っていた。


髪の毛の事だって、すぐに許してもらえると思っていた。


けれど、私は嘘つきだ。


ママの輝く様な笑顔を見る為に、私の事を見て欲しいが為に、私は嘘つきになった。


ママの前では“勇也”の嘘をついて、兄になる為に簡単に約束を破って。


こんな私の悩みに、誰が耳を貸すとでも言うのだろうか。


どうせ嘘つきの私の言う事は、花恋は信じてもくれないだろう。


(私って、嘘つき。私って、馬鹿じゃん)


真っ黒な感情が、私の心の中を巣食う。


「ごめん、花恋。本当に、ごめんねっ…!」


だから私は、それしか言う事が出来なくて。


これが、私と花恋の初めての喧嘩だった。



登校する時よりもはるかに憂鬱な気分で家へ帰った私は、一直線に私の部屋へ向かった。


ママには色々と理由を言い、私は兄の部屋ではなくて自分の部屋を使っている。


大きな音を立ててドアを閉めた私は、リュックサックを肩から外し、ゆっくりと床に置く。


そして、制服のままベッドに倒れ込んだ。


「もうっ、どうしてこうなるのかなっ………」


今まで耐えてきた全ての感情が、涙となって外の世界へ姿を現す。


本当は、苦しいのに。


ママに勘違いされてたったの3日目で、私の心はもう悲鳴をあげているのに。
< 73 / 309 >

この作品をシェア

pagetop