私の本音は、あなたの為に。
「お…私の事は何とでも言っていいけど、お兄ちゃんの事をからかったら…」


必死に、1人称を“私”に切り替える。


一呼吸置いた私は、先程よりも男子達を鋭く睨みつけ、こう告げた。


「絶対に許さねえから」


「……!」


「ひっ……!」


男子達は私の変貌ぶりに本当に驚いてしまった様で、あんぐりと口を開けたまま怯えた声を歯の隙間から出した。


「…でもっ…」


けれど、まだ諦めないしぶとい男子が居て。


その男子は佐々木という名前で、私のクラスの中でもかなりの問題児だった。


空気を読まなければ暴言を吐く。


そんな男子に、私は負けてしまうのだろうか。


「兄ちゃんが死んだのは事実だろ?可哀想に、ウケるんだけど」


“可哀想”と、“ウケるんだけど”のどちらを言いたいのかが全く分からない。


佐々木は、怯えながらも笑みを作った。


「お前みたいな凶暴な奴の兄ちゃんなんて、死んで当然……」


「うるせえよ!黙れって言ってんだろ!?」


「ちょっと、それは酷いんじゃない!?」


私の大きな声と、どこからか聞こえる反撃の声が重なった。


(えっ…?)


驚いて声の主を探すと、花恋が立ち上がって腰に手を当てていた。


(花恋…?)


喧嘩をしていたはずなのに。


花恋は私の方を向き、そっと笑って見せた。
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