副社長は今日も庇護欲全開です
「えっ!? け、結婚をしたくないって……。本当ですか?」

予想もしていなかった言葉に、すぐには理解が追いつかず呆然とする。すると、茉莉恵さんは小さく頷いた。

「直哉くんにも言ってなかったんですが、私……、住川くんが好きなんです」

「住川……さん? 住川さんって、直哉さんの秘書の方ですよね?」

そう尋ねると、彼女はまたも頷いた。

「学生の頃から、ずっと彼が好きだったんです。もちろん、彼も私を好きでいてくれて……」

「ちょ、ちょっと待ってください。それは、本当なんですか?」

頭がかなり混乱する。あのクールな住川さんを、茉莉恵さんは好きで、さらに彼も茉莉恵さんが好き……? そんな話は、直哉さんからも聞いたことがない。

「もちろんです。私は、学生の頃から、いずれは直哉くんと結婚をしろと父から言われていて。それを知っていた住川くんは、迷惑をかけられないからと、私への想いを誰にも話さず、私たちだけのなかでしまっていました」

「じゃあ、直哉さんも知らないんですね?」

「ええ。住川くんは、直哉くんが私との結婚を前向きに考えるかもしれない。そう思っていたみたいで。だけど今回、本格的に縁談の話が出たときに、付き合っている女性がいると言われて、私は嬉しかったんです」

「そうだったんですか……」

思い返せば、住川さんが以前言っていた言葉の意味が、少しずつ分かるような気がする。いつか、私と直哉さんの絆が深くなっていると言われたことがあった。そのとき、それを『希望的観測』とも……。

それは、私と直哉さんがうまくいけばいいと思っていたからなんじゃないかと今なら思える。

「直哉くんは、私に言ったんです。陽菜さんを愛してるから、結婚はできないと」

「直哉さんがですか……」

他の人に言われると、とても恥ずかしい。だけど、直哉さんが茉莉恵さんにそんなことを話してくれていたと分かり、心が温かくなってくる。満たされる気持ちって、こういうことを言うのかもしれない。
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