副社長は今日も庇護欲全開です
そんな私の手をさらに強く握った直哉さんは、駐車場とは反対の方向へ歩みを進めた。

「どこへ行くんですか?」

てっきり車に乗るのだと思っていたのに、彼の足は海岸沿いの遊歩道へ向いている。海を近くに見られる広い遊歩道で、数年前に整備された場所だ。

朝はジョギングをする人や、犬の散歩をする人が多い。夕方の今は、ちょうど沈みかけた太陽が眼前にあり、どこかロマンチックな雰囲気になっていた。

「今日、父にどう言われようと、陽菜に伝えたいことがあったんだ」

「私に……ですか?」

頷く直哉さんと並んで歩きながら、緊張でドキドキしてくる。話って、なんだろう……。そればかり考えている間にも、私たちは遊歩道へ着いた。

ところどころにカップルがいるなか、私たちは少し離れた場所に立つ。綺麗な夕陽でも眺めるのかなと思っていたら、直哉さんは私と向き合った。

「陽菜、俺はきみに出会えて、本当の恋を知った。人をこれほどまでに愛おしいと思ったことは、今までない」

「直哉さん……。嬉しいです」

その想いを、伝えようとしてくれたの? 胸いっぱいの気持ちで彼を見つめていると、ふいにジャケットの内ポケットから小さな箱を取り出された。

白い綺麗なその箱を直哉さんが開けると、そこには輝くダイヤの指輪が収められていた。

「直哉さん、これは……」

「きみへの婚約指輪のつもりだ。陽菜、俺と結婚してください」

そっと指輪を取り出した直哉さんは、それを私の左手薬指にはめる。指からこぼれ落ちそうなダイヤを見つめて、私は放心状態だった。

結婚を前提にとは、言われていたけれど、正式にプロポーズをされるなんて思ってもみなかったから。

「私で、いいんですか……?」

直哉さんを見上げるように見ると、そっと頬に触れられた。

「きみがいいんだ。俺は、きみと未来を描いていきたい」

彼のその言葉に、堪えきれないほどの涙が溢れていく。その涙を拭ってくれたのは、直哉さんだった。

「よろしくお願いします」
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