副社長は今日も庇護欲全開です
それからあとのことは、どこか夢心地ではっきりと覚えていない。

たしか、副社長から「また連絡する」と言われたんだっけ。でも、なんで連絡先を聞かれたの……?

ああ、そうだ。「きみと、もう少し話がしたい」そう言われたんだった。

どうして副社長は、そう思ってくれたんだろう。それに、その言葉には深い意味があるのかな……。

なんて、あるわけないか──。


「ん……。うるさいなぁ」

昨夜は、頭が興奮していたせいか、あまり寝付けれなかった。

意識がボーッとするなかで、スマホの着信音が聞こえてくる。今、何時なんだろう。そして、誰から電話……?

ベッドの隅に置いていたスマホに手を伸ばすと、時刻はもう午前十一時になっている。

すっかりお昼近くになっていたことに驚きつつ、ディスプレイに表示された名前を見て飛び起きた。

そこには、“真中副社長”の名前があったから。

「も、もしもし。下村です」

ベッドに座り直し、スマホを握り返す。すると、副社長のクスッと笑い声が聞こえた。

《ごめん。寝てたか?》
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