副社長は今日も庇護欲全開です
「うちの社員だったのか。それなら、ますます見過ごせないな。その手を、離してあげてくれないか?」

副社長の落ち着いた口調には余裕すら感じられ、島本さんはバツ悪そうに手を離した。

そして、軽く舌打ちをすると、足早にホテルを出ていった。

彼の後ろ姿を見送りホッと安心しつつ、副社長に向き直って頭を下げた。

「本当に、ありがとうございました。とても、助かりました」

「いや、たまたま通りかかっただけだから。余計なお世話かもしれないが、気のない男とは軽々しく一緒にいないほうがいい」

「は、はい……。気をつけます」

素っ気ない口調と鋭い指摘に、反論する勇気はない。

軽々しく一緒にいたつもりはなかったし、ほとんど無理やり二人きりにさせられたのに……。

本当は、それを伝えたいくらいだけど、副社長は噂どおりクールな感じ。

言い訳がましい主張なんて、まともに聞いてもらえそうにない。

そう思ったら、彼の“アドバイス”を、素直に聞くしかなかった。


「副社長、そろそろお時間ですが」

不意に男性の声が聞こえ、私は顔を上げた。
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