副社長は今日も庇護欲全開です
触れるだけのライトなキスだけれど、それでも幸せを感じる。

目を閉じ彼の優しさを噛み締めていると、穏やかな声が聞こえてきた。

「俺といっぱい出かけたいと、さっき言ってくれただろう? それを聞いて、きみへの愛おしさが募ったよ」

「え?」

思わず目を開けると、直哉さんの笑みが見える。たしかに、服を買ったときにそう言ったけれど、直哉さんの心にはそんなに響いたの……?

「陽菜は、見栄や欲とは遠くて、自然で素直だ。仕事に一生懸命で、自分を持っている……」

「直哉さんってば、褒めすぎですよ……」

そんな風に言われたことはなくて、とても照れくさくなってくる。はにかんだ笑顔を見せると、彼はさらに続けた。

「そんなことない。さっきの店で、当たり前にきみに服を買ってあげようとした自分が恥ずかしかった」

それを、気にしていたんだ……。そこまで考えなくてもいいのにと、直哉さんの気持ちを愛おしく感じる。

「私は、そんな風に思っていませんよ。ただ、嬉しいんですけど、特別な理由もなしに、プレゼントしてもらうわけにはいきませんから」

「そうだな。きみの言うとおりだ。きみといると、本当にいろいろ教えられる」

教えられるだなんて、おこがましくて答えようがない。だけど、私だって直哉さんと一緒にいて、学ぶことはたくさんあった。

「私だって同じです。仕事の面はもちろんですけど、直哉さんといて優しさを教えてもらっています……」

こんなに、誰かから大切に思われることはなかったから。彼といて、心が満たされることがどういうことか、教えてもらっている……。

「陽菜……。きみを、絶対に離したくない、心からそう思う」

「直哉さん、私もです……」

彼の背中に手を回すと、彼も私を強く抱きしめた。
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