薄羽蜉蝣
「と言っても、こんなところですまぇねな」
雑然とした店内で、焼き魚にかぶりつきながら与之介が言う。
店は結構混んでいて、隣に座った腕が触れそうだ。
どきどきと、佐奈の胸が早鐘を打った。
今日は鶴橋ではない。
あそこは仕事の繋ぎ場。
下手に人を連れて行くところではないのだ。
適当に見つけた飯屋は、多くの人でごった返していた。
「あの、新宮様は、いつもここに?」
「いや、まぁいろいろだな。それよりも」
ぼりぼりと魚の骨まで齧り、与之介は横目で佐奈を見る。
あまりに近くて、振り向くと返って話しにくいのだ。
「与之でいいぜ。同じ長屋の住人なんだし」
「でも、お侍だってお聞きしましたし」
「侍っつっても、浪人なんざ町人と変わらねぇ。お佐奈さんだって、あんな長屋にゃ不似合いだぜ。結構いいところのお嬢さんだったんじゃねぇのか?」
佐奈が黙り込む。
「ま、詳しいことは聞くめぇよ」
あっさりと、与之介は話を打ち切った。
雑然とした店内で、焼き魚にかぶりつきながら与之介が言う。
店は結構混んでいて、隣に座った腕が触れそうだ。
どきどきと、佐奈の胸が早鐘を打った。
今日は鶴橋ではない。
あそこは仕事の繋ぎ場。
下手に人を連れて行くところではないのだ。
適当に見つけた飯屋は、多くの人でごった返していた。
「あの、新宮様は、いつもここに?」
「いや、まぁいろいろだな。それよりも」
ぼりぼりと魚の骨まで齧り、与之介は横目で佐奈を見る。
あまりに近くて、振り向くと返って話しにくいのだ。
「与之でいいぜ。同じ長屋の住人なんだし」
「でも、お侍だってお聞きしましたし」
「侍っつっても、浪人なんざ町人と変わらねぇ。お佐奈さんだって、あんな長屋にゃ不似合いだぜ。結構いいところのお嬢さんだったんじゃねぇのか?」
佐奈が黙り込む。
「ま、詳しいことは聞くめぇよ」
あっさりと、与之介は話を打ち切った。