君がいて、僕がいる。



だけど、歩き出した私はすぐに圭介の腕の力によって引き戻され、あっという間に私は圭介の腕の中。

「ちょっ…行くんでしょ?」

「ん、行くけど
真希を離したくなくなった」

「はは、なにそれ」


私がそう言って笑っても、圭介はずっと真剣な顔をして、私を見ていた。


「…わかってる?俺がこんだけ好きって」


……これだけ好き
そんなこと言われたって、わかるわけないじゃん。


「でも、アユさんの方が好きなんでしょ?」


真顔の圭介につられて私も真顔でそう言うと、圭介の顔は悲しそうに、歪んだ。

目線がそれるだけで、その答えはいっこうに返ってこなくて


「……ごめん、嫌な質問したね。
もう行こ」


そういって、緩んだ腕から私は抜け出した。

……ちょっと、期待してたんだ。
最近の圭介は『私への好き』で溢れていたから…もしかして、アユさんより…は無理でも、同率一位くらいにはなれてるんじゃないかって。

…でも、まだむりだったみたい。
言葉がなくても、あの圭介の表情を見ればわかる。


私はまだ、2番目の女だ。


傷つかないように、傷つけないように避けてきたことなのに、私はまたどうして自分から傷つきにいってしまったんだろう。


私はもうその場にいたくなくなってしまって、圭介をおいて、右なのか左なのかもわからないこの道を歩き出した。

もう、どうすればいいのかわからなくて……


…でも、そんな私を追いかけてきてくれる人もいて


「待って真希」


私はまた、さっきのぬくもりに包まれる。


「ちょ、外でやめてっ」

「やめない」


今度はどんだけもがいても外れることはなくて、強い力で抱き締められていた。


「ねぇ真希
俺が真希のこと好きってだけじゃだめ?……真希のそばにいたいって想いだけじゃだめ?」


その言葉に、どれくらいの女が喜ぶだろう。
でも、でもね…


「その言葉の裏側は、私が一番好きじゃない、ってことだよね」


一番とか関係なしに、圭介が私のことが好きだから、それだけじゃだめなのか?そういいたいんでしょう?

たとえ一番じゃないとしても、圭介は私のことがすきだから、それで満足してくれよって、そういう意味なんでしょう?


「…もし、私がそれじゃ嫌。一番じゃなきゃ嫌って言ったら、圭介はどうするの?」


そんな、圭介を苦しめる言葉をまた投げ掛ける。
その答えが怖くても、圭介が苦しませてしまったとしても
今の私には、投げつけたくて仕方なかったんだ。


「……このままじゃ傷つけるだけなら、俺は身を引く。
真希のこと大事だけど、大事だから安易に一番だ、なんて言えない。
真希の幸せのために俺は身を引く」


でも、私はやっぱり後悔するんだ。
どうしてこんな本音も引き出してしまったんだろう、って


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