君がいて、僕がいる。
どうやら圭介の親戚の家は電車で行くらしく、そのまま駅へと連れてこられた。
電車ではボックス席へ座ることが出来たものの、まったく会話はない。
お互い、ひたすら外だけを見ている。
知らない町、知らない景色。
どんどん離れていく私たちの町。
これからどこへ行くのか、詳しいことはまったく知らないけど、今この時間が嫌いじゃない。
「真希」
「ん?」
かれこれ30分、会話もなく電車に揺られていたこの時間をやぶったのは、圭介だった。
「さっき、ごめん」
「だから謝らなくていいって
私も悪かったし」
「いや。…俺さ、さっき真希に言われたことを考えてたんだよ。俺がいった言葉の裏側。
……本当さ、真希の気持ちになったらそう思われて当然だなって思って。
だから、ごめん」
「…いいよ。私もひどい質問したしね」
…もし、私が圭介の立場だったら
私がもし同じことを圭介に聞かれたら
私もきっと、圭介を傷つけないためにと同じような答えをかえした。
だからね、圭介はやっぱり悪くないんだ。
全部、私のわがままだから
「あのさ、今日祭りがあるんだよ」
「お祭り?親戚の家の近くで?」
「そう。俺小学校途中までその家ですんでたから、ガキの頃から好きで、毎年この時期は親戚の家に行ってて」
「あ、そうなんだ。
じゃあ今日もそのお祭りに行くんだ?」
「そう。
…本当は、アユのことも何回か誘ったんだけど、アユは俺の親戚の家ってことで行きたがらなくて…
だから、真希にも嫌がられるんじゃないかって正直ビクビクしながら誘ったんだよ。
でも、真希は来てくれるって言ったら俺けっこう浮かれてたんだ。
彼女とあの祭りに行くの、ちょっと憧れだったし」
「はは、そっか。
私もここ数年お祭りとか行ってこなかったから、すごい楽しみ」
私が笑顔で言うと、圭介もやっと笑ってくれた。
「真希となら、絶対楽しいわ」