君がいて、僕がいる。
「あ、真希にはこれあげる」
「え、これ?もらっていいものなの?」
「俺ほかにもあるからこんないらなかったんだよね」
それは学校の制服のネクタイ。
色が違うだけで男女共有だから使えないことはないけど…
「……本当にいいの?」
「俺にはそんなに必要ないから」
「……意味わかんないけど…じゃあもらっとく」
「俺が毎日使ってる俺の汗が染み込んだやつ」
「新品のはないんですか」
「ないわ!贅沢言うな!」
……まぁなんだっていいけどさ。
圭介からなにか物をもらうってないしな…
「あ、やばい焦げる」
「おいーー!!」
「あ、まだ大丈夫だった
いい具合」
「おぉ、めっちゃうまそ」
「あと少し~」
そうして焼けた2枚のお好み焼き。
たった2枚だけだったけど、これはこれですごく楽しかった。
今まで、なにかを二人で作るってことがなかったから、すごく新鮮だった。
この日は片付けも一緒。
ホットプレーとは圭介、他の食器は私が洗った。
「んー、お腹いっぱい」
「帰したくないわー」
「あ、将希のこと忘れてた。
帰らなきゃ」
「……将希なんてほっときなよー
もう少し俺んちにいなよー」
「だってすでにけっこう待たせてるから絶対キレてるよ」
「……じゃあ、あと5分だけ。
そしたら送ってくから」
そういって、圭介は私を腕で包み込む。
……なんだろうな、この寂しそうな感じ。
改札出たときからずっとそう。
私がどこかへいってしまいそうなこの感じ。
別に、どこにも行ったりしないのに…
「……圭介?」
「ん?」
「なにがあったかわかんないけど…
でも私はずっとここにいるから、そんな寂しそうにしなくていいよ?
明日も会えるんだし」
「……ん、そうなんだけどさ」
だけどやっぱり、圭介の腕は私を離そうとはしない。
こんなに捕まえていなくてもどこにもいかないのに。
「真希、こっち向いて」
そう言われ、顔をあげれば降りてくるキス。
本当に、どこまでもいつもの圭介らしくない。
キスはする方だけど…でもこうすがってくる感じっていうか…なんかいつもと違っていた。