君がいて、僕がいる。
洗面所で洗顔と歯磨きをして、部屋で身だしなみを整えて
さぁ、学校に行くかと下に降りたら
……そりゃもう派手にケンカしてて、言い合いがうるさすぎるけど
ま、男同士ならこんなもんかな、と。
昨日の『どうせ、何を言っても無駄』と言った将希がまた父親とぶつかってるなら、それでいいやって。
諦めないならそれでいいやと、私は先に家を出た。
久しぶりにこの道を一人で歩く。
いつもいる圭介はいない。それだけで少し寂しくて……
学校へ向かうこの足は、自然と早くなっていった。
10分、1人きりで歩いて今日もこの学校に入る。
ここから屋上はまだ遠いけど、それでも階段を急いで上る。
昨日帰るときはなにも思わなかったのに、今は圭介に早く会いたかった。
こんな気持ちは初めてで……
私はいつの間に、こんなに圭介に惹かれていたんだろう
いつの間にこんなに好きになってたんだろう
息を切らせて屋上につくと、圭介はまだいなかった。
先に先生に用があるって言ってたから遅れてくるのかな…とひとり、いつもの場所に腰を下ろす。
1人でしばらくここを眺めていると、私のケータイが鳴った。
着信はまさかの将希。
「なに」
『俺だけ置いてってんなよ』
「はぁ?そんなこと言うために電話してきたわけ?」
『んなわけあるかよ、アホか』
・・・アホかって。電話、切ってもいいですか?
『俺の昼飯作りに帰ってこいよ』
・・・本気で、電話切ってもいいですか?
「……なんで私がわざわざ…」
『今日1日家で大人しくしてたらまた外出ていいって言うから』
「……そか、じゃあ今日は家にいるんだ?」
『あぁ。……あのさ、親父が家に帰ってこない日があるって真希いってたじゃん。外に女がいるって』
「あぁ、うん」
『それ、違ったわ。
……俺が家に帰ってこないから、俺を探してたんだと。だから、帰れなかったり、朝方に帰ってきてたんだとさ』
「え?…将希のことを…」
……さっき、言ってたな
周りに助けてくれる大人がいなかったら、って…
……じゃあ、お父さんはいつでも将希を助けられるように、いつもそばに…
『だから、真希は変な心配しなくていいから』
「……そっか、わかった」
『まぁ、くそうざい親父には代わりねぇけどな』
「それはあんたも悪いからでしょうが」
『うるせぇよ。
じゃあちゃんと昼には帰ってこいよ』
「はいはい、わかったよ」
『じゃあな』
……ま、まだまだ道のりは長そうだけど
お父さんが、ちょっとだけ素直になったのかな。
いっぱい喧嘩して、ひとつずつ少しずつわかり合えればそれでいい。
また、平穏な家が戻れる日が来るなら、それで……