君がいて、僕がいる。



嬉しくなった私は立ち上がってフェンスまで行き、手をかける。

なんでだろうね、不思議。
少しだけ、この町が明るく見えるよ。


「死ぬの、やめた?」

「え?」


突然聞こえた君の声に、私の体は自然と振り返る。
今日の君もとても優しい顔で私を見ていた。


「……出会った頃とは大違い」

「そう、かな」

「そうだよ。知り合った頃の真希は本当に死にそうだったからね
今日はなんか幸せそうに笑ってたから」


……そか。私、幸せそうだったのか…

どうすれば幸せになれるのか
その答えはまだ私にはわからないけど…それでも、もしかしたら私の未来はまだまだ捨てたもんじゃないのかもしれない。
まだ私には明るい未来が待っているのかもしれないな。


「待たせてごめんね?」

「ううん、全然待ってないから大丈夫」


……なんて、本当は嘘。
本当は会いたくて会いたくて仕方なかったよ。

圭介と出会って1ヶ月、本当にあっという間だったけど…きっと濃い毎日を送ってきたんだろうな。
だって、生きてるのが疲れていた私が、今は圭介に会いたくて私を走らせる。生きてるのが楽しくなってるんだから。


「……真希のそんな顔が見られたら、俺も決心ついたよ」

「え?なんの?」


私がそう聞くと、圭介は優しく私の頭に手を乗せた。
……でも、圭介の顔はとても寂しそうな笑顔を私に向けた。

それでも、ちゃんと私の目を見て。


「……真希と、別れる決意」


そう、笑顔のまま私に告げた。


「___え?」

「真希には俺はもう必要ない。
だから、俺と別れよ」


一瞬にして、目の前が真っ暗になる。

どうして、なんでって
声にならない言葉が私の頭をぐるぐると回っていた。


「急でごめんね」


そういって、私に背を向けて歩き出した。
言わなきゃ、言わなきゃ。

今言わなきゃ


そう心で強く思うと

「…待って!」

私の声はすんなりと出てくれた。



< 165 / 248 >

この作品をシェア

pagetop