君がいて、僕がいる。

「え、え？なんで知って…」

「いや普通にツレから聞いたんだけど」

「で、でも…！じゃあなんで今でも圭介のこと、あんな慕ってるわけ！？
罪かぶせられたのに！！」

「・・・え、ちょ待っ…
もしかして真希、それが理由で別れたのか？」

「……それだけじゃない、けど…」

「は！？まじで言ってんのかよ！
そんなことで別れてんじゃねぇよ!」

「だ、だって…！
あのときの将希の悔しそうな顔とか、お父さんの怒った顔とか…お母さんの、悲しそうな泣き顔思い出してきちゃって……」


たかが万引きでって思うかもしれない。
当時の将希だったら、そんなことやっていても不思議ではないかもしれない。

……でも、どこかで信じてたんだ。あの頃…どんだけ荒れたって、将希は誰かを傷つけることはしないって……


「……ばかじゃねぇの」

「バカじゃないよ。
こんな家族でもさ、圭介の話聞いたらみんなの顔思い出しちゃって
…こんな家族でも、やっぱり大事なんだなって思えてきちゃったんだから仕方ないじゃん」


こんなボロボロ家族でもさ
どうしても、裏切ることはできなかったんだもん。

やっぱり大事だったんだもん。あんたみたいな弟でもさ…


「……本当にバカだな」


なんとでもいいなさい。

こんなに苦しくて辛くて…その分、圭介のことが好きだったんだとわかったけど…
でも、それよりももっともっとあんたら家族のことが大事だってわかったんだから、よかったんだよ。


「……あの、さ
ずっと俺も言ってこなかったんだけど

…本当はそれ、ちげぇんだよ」

「・・・は？え、どういう意味？
まさか本当に万引きしたの！？」

「そうじゃなくて…！
……俺が神谷さんの罪をかぶったんじゃない。
神谷さんが俺の罪をかぶったんだよ」


その将希の言葉が、すぐには理解できなかった。

だって、圭介がやった万引きを、将希がかぶったんでしょ…？