君がいて、僕がいる。



それから他愛もない話をしながら歩いて数分
私たちはいつものファミレスへと到着する。

夏に、かなりの頻度で圭介と通った、この店に。


「はぁー、明日優斗くんも行っちゃうのか…」

「はは、寂しい?」

「寂しいし、勉強教えてくれる人もいなくなって困るー」

「……後者が本音でしょ」

「いやいや!寂しいよ!卒業式も不参加だったけど卒業しちゃうんだなぁと思うと寂しかったよ!」

「はは、そっか。
そういってくれるなら嬉しいよ。
でも長期休暇は帰ってくるし、そしたらまた一緒にご飯とかいってね」

「もちろん!!」


なんていうか…やっぱり、いなくなるのは寂しい。
そこにいるのが当たり前だった人だから…


「あ、そういえば話あるんだよね?私に」

「あ、うん」


そう、実は今回は優斗くんからのお誘いだった。
私に大事なお話があるとかで。
『でも告白ではないから安心してね』なんて言ってたっけ…

ま、そのついでにお祝いでご飯を奢ろうとしたんだけどね。


「……今まで、真希ちゃんには話さないようにしてきたんだけどさ
神谷のこと」

「圭介のこと…?」


優斗くんは表情は変えず、明るい顔のまま話を進める。
それが、私にとっても気が楽だった。


「神谷、不処分になったから」

「・・・えっ!?な、なんで!?」


だって、刑事事件なら殺人未遂的なのに該当するんじゃないの…?


「んー、まぁ俺が決めた訳じゃないからわかんないけど
聞いた話だと、まず神谷がすごく反省していて、二度としないと固く誓ったからって。
それと、そもそもそんなことが起きた理由。その動機が情状酌量の余地ありってこと。
んで、そんだけ憎んでた相手だけど、神谷は自分からナイフを捨てたじゃん?
自分の意思で、犯行をやめた。それもまた大きくて。

んで、再犯の可能性は低いってことで、不処分。
保護観察もつかずにね」

「不処分…そんなことあるんだね…」

「それだけ神谷が反省してるってことじゃん?」

「そっかぁ…」


不処分、か……
よかったね、圭介…


「……じゃあ、不処分と決めたくれた人の期待を裏切らないように、圭介はこれから頑張って生きてかなきゃだね」

「そうだな。
ま、それだけ教えたくてさ」

「そか、ありがと」

「今はもう親戚の家に引き取られて、一緒に暮らしてるんだとさ」

「そっかぁ」


おじいちゃんとおばあちゃんのとこで……
なら、二人とも嬉しいだろうな。毎日、圭介と一緒で……

それに、北山さんや、美咲さんたちも嬉しいだろうな。


「……優斗くんは、圭介に会った?」

「いや。
……俺明日ここを発つし、俺は当分会えないかな

でも、またいつか会えると思うし、それまで待つよ」

「それもそうだね」


……私とも、またいつか
笑って会える日がくるといいな……


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