君がいて、僕がいる。



「あ、そういえば優斗くんって好きな人いたじゃん。
告白とかってしたの?どうなったの?」


それまで優しい笑顔だった優斗くんだったけど、その瞬間その笑顔が固まった。
もうそれだけで「やばい、聞かなきゃよかった」と察知。


「い、言いたくなかったらいいけど…」

「いや…
……なんか、いつの間にかあいつに彼氏できてたんだよね…」

「え!そうなの?」

「だから撃沈。
まぁそんなうまくはいかないと思っていたけどさ」


はは、と笑う優斗くんお笑顔がなんとも切なくて
こんなに優しくて、かっこよくて、頭もいいのに…
恋って難しいんだなぁ、と改めて思った。


「……でも、大学に行っていろんな人と出会ったら、優斗くんならすぐ彼女とかできるでしょ」

「そうかなぁ」

「そうだよ。なんかありきたりなこと言っちゃってるけど、でも優斗くんレベルなら絶対またいい人と知り合えるよ」


かっこいいし優しいし頭もいいし
ついでに、友達思いだしね。私の面倒見もいいし。


「でもそれ、真希ちゃんにも言えることだけどね
……まだ好きなんだ?神谷のこと」


その言葉に、今度は私の顔が固まる。


「モテるのに、全部断ってるんでしょ?告白」

「……好きかどうかなんてわからないよ。
実際会ってもないんだもん。

でも、圭介以上に好きになれる人はなかなかいないんじゃないかなって。
今の私は、なんでも圭介と比べちゃう。
きっと私はこの先も圭介のことは忘れないだろうし、これまでのことも忘れないと思う。いろいろあったし。

たぶん、それを全部私の中で整理できなきゃ、次の恋なんてできないと思うんだよね」


しちゃいけないと思った。
私がそう感じた。誰かを好きになることはできるかもしれない。
でも…忘れられない人がいるのに他の人と付き合ったら、きっとその相手を傷つけてしまう。

私がそうだったから。
だから、他の人にこんな思いをさせたくないんだ。


「……そっか、整理か…
それはわかる気がする」

「私はもう軽い気持ちで付き合うことはやめたんだ」


その先がどうなってるかわからない。
もしかしたらお互いすごくのめりこんでしまうかもしれない。
のめり込めばのめり込むほど、相手を傷つける。
それなのに圭介を忘れられない私が私を嫌になるだろうから。


「……送ってくれてありがと」


気がつけば、もう私の家の前。
これで、優斗くんと会うことはしばらくなくなるんだ。


「真希ちゃん、そんだけ神谷のこと大事にしてくれてありがとね」

「はは、なんで優斗くんがお礼を言うの」

「だって俺あいつの友達だし?
それに、やっぱあいつが真希ちゃんのおかげで元気になったのは間違いないからさ」

「……そっか」

「それじゃ、元気でね」

「うん、優斗くんも。
気を付けていってきてね」

「うん、ありがと」

「こちらこそ、今までお世話になりました。」


そういって、優斗くんは私に手を振って帰っていった。


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