君がいて、僕がいる。



「そういや真希ってもう神谷さんのこといいわけ?」

「いいわけ?って…別れてから何ヵ月たってると思ってんの」

「でもあの日、神谷さんに言ってたじゃん
辛くなったら必ず手を掴むからって

その程度の言葉だったわけ?」

「そうだけど…でもどうすることもできないじゃん。
会ってないんだから」

「普通に会いにいきゃいいじゃん」

「今さらどの面さげていけばいいの」

「いや別に普通でいいと思うけど
……っていうか、真希ってあの約束ちゃんと覚えてんの?」

「…約束?」

「は?…もしかして、そういうとこの記憶はなくなってんの?」


約束、ってなに…?
覚えてないよ……?


「…どんな約束?誰との約束?」

「……神谷さんとだけど」


なに…?まったく記憶にないんだけど……
もう、将希の口から次に出てくる言葉が気になりすぎて、数学の宿題どころではない。
もう、将希から目を離せなくなっている。


「ま、正確には木村さん経由だったけど
”戻ってくるまで、鍵を頼んだ”って」

「……鍵?」

「いやそこ疑問に持たれても俺は知らねぇけど
なんか、神谷さんから預かってねぇの?」


……預かってるものなんて、なにも…
圭介から受け取ったものなんて……


「あ、あれあるじゃん」

「……あれ?」

「あれ、ネクタイ。
真希、男用のネクタイ持ってたじゃん。
あれ、神谷さんのじゃねぇの?」


あ、ネクタイ…!!

思い出した瞬間、もう私は立ち上がっていた。
将希の部屋から飛び出して、私の部屋へと急ぐ。

クローゼットにずっとしまっていた圭介のネクタイを取り出した。
……でも、当たり前だけど鍵なんてなくて…

だいたい、ネクタイに鍵がつくわけないじゃん
でも、他に記憶ない……もらったものなんて、他にない…

そう思いながら、ネクタイを握りしめた。


「……ん?」


あれ…?このネクタイ……
なにか、固いもの…

……もしかして!!


もう、確信した私は、急いでハサミを取りだし、縫い目を丁寧に切ってほどいていく。
そして少し隙間が空いたところを下にして、少し上下に降ると、チャリン…と音をたてて鍵がひとつ出てきた。


「……あった!!」


鍵……
この鍵がどこの鍵か、なんて
今の私には容易に想像つく

こんなわかりにくいところに隠した意味
そんなの、考えたところで見付かることないから考えることもしない。

もう私は、鍵を握りしめて、また走り出そうとしていた。


「あったわけ?」


そこに、将希がドアから顔を覗かせた。


「あった!ネクタイのなかに!!」

「へぇ…よかったな」

「……約束って、戻ってくるまで鍵を頼むって、それだけ?」

「それだけ。
会いたいなら、さっさと行けば?」

「え、でも圭介って戻ってきてるの…?」

「……そのはずだけど
知らねぇの?」

「知るわけないでしょ!!」


私がどうやって知るんだよ!知れるわけないだろ!
もう優斗くんもいないし!!

……でも、この前優斗くん、圭介には不処分が決定して、今はおばあちゃんちにいるって…
もう、こっちにいるってこと…?


「ま、もう4月だし近くにはいると思うけど。
一応いっとくけど、前のアパートはもう解約してるからな」

「じゃあどこに圭介いんのさ!」

「俺が知る分けねぇだろ
自分で連絡でもすれば?」

「連絡……」


…そっか、私…
圭介の連絡先知ってるんだ、変わってないんだ……


「まぁでも俺なら
連絡なんかしなくても、どこにいるかくらいわかってほしいとこだけど」


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