君がいて、僕がいる。
それから学校について、まだこの校舎へは入っていないという将希を、ちょっとだけ案内した。
といっても、職員室の場所、購買、自販機、そして将希の教室まで。
「教室ここね。
帰りはどうすんのー?」
「……また連絡するわ」
「はいはい」
「あ、でも今日たしか母さん病院でいねぇから、昼は作るために帰れよ」
「じゃあ一緒に帰ればいいじゃん」
「それはまた連絡するわ」
「はいはい、じゃあね」
それだけいって、空っぽの教室に将希を置いて、私はまた階段をのぼることにした。
4階のここから階段を上る。
久しぶりだけど、とっても見慣れたドアの前にたって、私はまたドアノブを捻るけど、やっぱり鍵は閉まっていた。
あれから試してない。
絶対ここのだろって確信してたから、なんの疑いもかけることなくここのドアに鍵穴に、圭介のネクタイから出てきた鍵を差し込むと、
カチャン、と音を立てた。
そしてドアノブを捻ると
ギーーっと音を立ててドアが開いた。
「……久しぶり」
久しぶりに来たここに、まずは挨拶をした。
誰もいない、ここ。
春の朝、ここはまだ少し肌寒かった。
いつもふたりで座っていたあそこには、やっぱり誰もいない。
鍵がしまってたんだから当たり前なんだけど……
私はフェンスまで近づき、手をかけた。
フラれたあの日、ここから帰る圭介の姿が思い出される。
あのとき…迷惑をかけるからと私をふった圭介だけど
あのときもうすでに熊谷って人を殺して、自分も死ぬことを決めていたのかな…
だから、私に別れを告げたのかな……
それも、圭介なりの優しさだったのかもしれない。
別れを告げられずにいなくなってしまった彼女を想い続ける圭介だからこそ、ちゃんと別れを告げてくれたのかもしれない。
……でも、そんなのやっぱり悲しすぎるよ
どうしてなんの相談もしてくれなかったのって…
一番近くにいたのに…そこまで、思い詰めてるなんて気づきもしなかった私が情けない。
『会ってないから好きかどうかなんてわからない』
そんなことを言ってきた私だけど…ここに来ると鮮明に思い出される。あの頃のことを、鮮明に思い出す。
いろんなことがあったねって…
毎日暑かったけど、いろんな話をした。
彼女になって、先輩後輩に戻ってもここで会って、でも
一番になる覚悟を決めたのもここだった。
……そして、一番になれなくてフラれたのもここだった。
思い出すだけで、心が温かくなる
その温かさに、今でもまだ涙が出てくるよ……
いろんなことがあったよね……
もう、会えないのかな…
「死ぬの?」