君がいて、僕がいる。



圭介は遠くの空を見て少し黙ったけど


「……アユはいつも俺を全力で好きでいてくれた」


初めて見るとても儚く切ない目でそう話し始めた。


「最初は見た目とか、誰にでも優しいとことかが好きだったんだけど
付き合い出してからのアユは本当に俺だけ特別で、俺だけに向けてくれる優しさとか厳しさとかあって
なんかな…うまく言えないんだけど

本当に俺をすごい好きでいてくれて
俺のためにいつも一生懸命だった。……それだけ。」


すごい好きでいてくれた、か。
……はは、本当に私とは全然違う人だな

私なんて、自分を守るために気持ち押し殺してんのに……


「全然うまく言えないんだけど
アユは自分のことも他人のことも愛せるやつだった。」


……ほら、やっぱり私なんかとは全然違う。
いつもこんなものだと最初から諦めてる私とは……


「……正反対だな」


真逆な、正反対の人だった。


「え?」

「なんでもない」


きっと、人としてすごく魅力的な人だったんだろうな。
あんだけきれいで、表面からもわかるいい人感。
うらやましい限りだよ。私なんか、こんなんなのに……


「……本当に好きなんだね」


アユさんのことを話す圭介は本当に感情的。
今ここにアユさんがいなくても、アユさんのことを思い出して無意識に出てる優しい表情に、悲しい表情。

いつもは心に奥にしまいこんでる感情が、このときは表に出てきていた。


「…好きだった、だよ」

「いや強がんなくていいから。
どうせ私は知ってんだから本音でいこうよ」

「……俺さー、アユと付き合ってるときはアユが本当に本気で最後だと思ってたんだよね。
アユが死んでからも、その想いは変わんなくて

……でも、真希と知り合ってから俺はすぐに真希に惹かれたんだよ。
弱い真希を守りたくなったんだよな」

「…弱い?私が?」

「うん、弱さ全開だったけど」

「……そっか。でもそれはさ、きっと
アユさんのことを守ってあげられなかったからなんだろうね」


そうやって考えたらアユさんにも感謝だな。
……感謝もするけど、どうしていなくなったんだって、責める気持ちすら強くなるよ。

どうしてこんなにも愛してくれる人がいるのに……


「本当はまだどこかでアユさんが生きてたらいいのに」


そうすれば、すべてがまるく収まるのにね……


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