君がいて、僕がいる。
「……でも、アユが今いたら俺らはきっと知り合ってなかった。
だから、生きてたらなんて考えるのは俺はやめたよ」
「そうだね。きっとアユさんが生きてたら
私は今ごろ死んでただろうね」
ねぇ、アユさん
どうして死を選んだの?こんなにも愛してくれる人がいるのに。
どうして私はまだ生きてるの?
どうして私が生きててアユさんがこの世にいないの?
不思議で仕方ないよ。
「……たとえ俺と出会わなくても、死んじゃだめだってば。
悲しむ人がいるんだからさ」
「…それはさ、圭介が幸せだからだよ。
圭介には、うちの現状がわからないから言えることだよ」
疲れきった母親に、外に女がいる父親。
そして、ほとんど帰ってこない弟。
笑い合える家族なんてものはいない。我が家にそんな時間はない。
会えば喧嘩、怒鳴り声、泣き声。
そんな家なんだから
そんな話をしたら、圭介は私の手を強く握りしめた。
「真希、次そういうこといったら本気で怒るよ」
そう、すごく真剣に。
「失ってからじゃ遅い。
そうやってぶつかりあってるときの方が、よっぽど幸せなんだよ。
ぶつかってるってことは、まだお互いが諦めてないから。
お互いが真剣だから、なんだよ。
いなくなったらそれすらできないんだからな」
ハッとした。
そうだ、この人は家族を失ったんだ、って……
どうして私はこの人にこんな話をしてしまったんだって……
「……俺の両親が死んだとき、どうして俺もつれていかないんだって思った。
どうして俺だけ残したんだって。
その時は俺はわからなかった。でも真希と知り合ってわかったんだよ。
その頃俺、すげぇ荒れてたから……
きっと、家族に見捨てられてたんだなって。俺なんか、どうでもよかったんだろうなって。
だから、真希は自分の家族を貶したりすんなよ。
怒ってくれる人がいる幸せ、忘れんな」
「……うん、ごめん」
「…ん、いこ」
そういって私の手を握ったまま、圭介は歩き出した。