君がいて、僕がいる。



それからは無言で丘まで歩いてきたけど

「……これからこの階段を上るのか…」

このたかーい階段を目の前に、思わずそんな言葉が口から飛び出した。


「えっ、いきなりそれ?」

「いきなりってなんなの」

「いやだってさっきまで沈黙だったのに。
じゃっかん気まずかったの、俺だけ?」

「え、気まずかったの?」

「うわ、まじで俺だけなやつ」


気まずくはなかったな…悪いけど。
ただ特に話すことがなかっただけで…暑いし…


「……なんで気まずかったの?」

「んー、なんか余計なこと言ったかなって」

「え、そんなことないよ。
その通りだなって思ったもん。気にしないでよ」

「なんだぁ、ならなんかしゃべってよ」

「いやなんか話題なくて。別にいいじゃん。
早く階段上っちゃお」

「……それもそうだね」


階段の下の自販機でしっかり飲み物もかって、私は覚悟を決めて階段の一段一段上り始めた。
これも流れ星を見るためだ!!と気合いを入れてね。


「危ないから手すり持ちなよ」

「え、あ、うん」


危ないから、そういわれて後ろを振り向けばやっぱりまっすぐな階段は少し上っただけでもけっこうな高さで……


「落ちたら痛そうだね」

「真希なら死ななそうだね」

「ちょっと。どういう意味」


私がそういうと、圭介は楽しそうに笑った。
……ま、この人が楽しそうならなんでもいいさ。


「圭介はなにを願うの?」

「ん?前と一緒。守れる男になる!
……真希は?」

「私ねー、特にないというか、思い付かないんだよね
私はなにを願えばいいんだろう」


『幸せになりたい』

そんな漠然とした願いしか、私にはない。
私の幸せはどこで待っているのか
私はどうしたら幸せになれるのか
まったくわからずにいた。


「……圭介は守れる男になったら幸せになれるの?」

「え、わかんないよ。ただの自己満だもん」

「自己満って」

「ただ今の俺の最大の願いっていうか
やっぱ守ることさえできれば失うことはないわけじゃん?」

「あー、なるほど。確かに」


現状維持。それも大切だよな。
私も今圭介が隣にいて幸せってもんだ。

……所詮、2番目だけどさ。


……ん?所詮2番目…
ってことは私は圭介の1番になれたら、もしかして幸せになるんじゃないか?
とりあえず、今よりはよくなるはず!!

よーし、私は『圭介の1番になりたい』と願うことにしよう。
めっちゃ女子高生っぽい願いだな。自分で言うのもなんだけど。


「はぁー、やっとついた」


なんて考えてたらあっという間に頂上。
この丘も大したことはないね。初めて上ったよ。


「結構人いるもんだねー」

「やっぱ流星群が見れるからじゃん?
俺らあっちのベンチ座ろ」

「あ、うん」


慰霊碑がたってるとか、出るとか、なんか怖いイメージしかなかったんだけど…初めて来たここは想像よりもはるかに怖くない。
という人が多い。

大人もいれば、私たちみたいに高校生カップルもいるし、なんなら家族連れまでいる。
全然怖くないじゃないか。


「…ここ、いつもこんなに人がいるの?」

「え、いつも?俺もあんま来ないから詳しくはわからないけど、普段は全然人いないよ。
だから今日は特別なんじゃん?流星群だし」


ふぅん、やっぱそうなのかぁ。
まぁ、たとえ怖くなくてもあの階段を上ってまでは来たくないな。
しかもこのくそ暑い中……


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