羊と虎
『消えたい・・』
「おはよう」
髪をおろした凱が柔らかく笑って挨拶をする。
「お、おはよう!」
『普段とのギャップが半端無いわぁ。でも、こういう姿を見られるのって、限られた人なんだよね?
私もその一人に入ったんだ・・』
動揺しながら挨拶を返す杏奈だが、その反面今の状況が嬉しかった。
「ごめん・・寝坊した。直ぐに朝食の準備をするから」
「え、いや、いいよ。凱朝弱そうだから」
「バレた?でも、もう目は覚めたから。顔洗ってくる」
そう言って杏奈の返事を聞かずに部屋を出て行ってしまったので、帰るタイミングを逃してしまった。
そうこうしている内に凱が身支度を済ませて戻って来る。
入れ替わりに杏奈も身支度を済ませに行く。
さっぱりした気分で戻って来た杏奈は、朝食の準備を始める凱を大人しく見ていた。