溺愛診察室~一途な外科医に甘く迫られています~
それに遠くから救急車のサイレンの音が聞こえてきた。

さすが大きな総合病院。時間なんて関係なく患者はやって来るようだ。

調べてもらっている間、受付で立って待っていると背後から躊躇いがちに声が掛けられた。

「もしかして、佐野……?」

私を呼ぶ聞き覚えのある声にドキッと鳴る。

ゆっくりと振り返ると、私を見た彼――佐々木真太郎(ささき しんたろう)は顔を綻ばせた。

「やっぱり佐野だ。……びっくりしたよ、緊急搬送されてきた患者さんの家族欄に、佐野の名前を見つけた時は」

「佐々木君……」

驚いた。……もう十年も経っているのに、私だって気づいてくれた佐々木君にも、昔に比べて男らしくなって、ますますカッコよくなった彼が佐々木君だってわかった私も。

十年ぶりの再会に思わず立ち尽くしてしまう。

すると彼はこちらへ真っ直ぐ向かってくると、受付の女性に声を掛けた。

「岡本弘子さん、僕の担当なので大丈夫です。僕からご家族にお話いたしますので」

「は、はい……! わかりました。よろしくお願いします」
< 13 / 279 >

この作品をシェア

pagetop