溺愛診察室~一途な外科医に甘く迫られています~
彩音は春休みが終わるまで、二週間ほどこっちにいると聞いている。

『それよりあんたは大丈夫なの? 家族と会うの、久しぶりなんでしょ?』

「まぁ……」

砂羽は高校以来の友人。私の家庭の事情もよく知っている。

「ずっと逃げてばかりいたけどさ、いつまでも今のままじゃいられないなと思って」

『それもそうね。……でもそういう風に気持ちの変化が現れたのは、やっぱり佐々木のおかげなの?』

からかい口調で聞いてきた砂羽に、すぐさま「違うから」と否定した。

思いの外、大きな声が出ていたようで歩道を歩く人の注目を集めてしまい、肩をすくめた。

「家族の話は佐々木君にしていないし」

声を潜めて抗議した。

『そうなの? 私はてっきり……。佐々木と再会したことで、心境の変化でも起こったのかなーと思ったけど』

「違うよ。……佐々木君とは本当、何気ないことしか話していないし」

踏み込んだ話はお互いしていない。そう、本当に当たり障りのない何気ない話しかしていないんだよね。

今のままでお互いのことを知っていくことができるのかな。――そう思っていても、自分から家族の話をしたいとは思えない。
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