溺愛診察室~一途な外科医に甘く迫られています~
薫ちゃんってば、笠井君の分を淹れてこなかったの?

どうやら本当に淹れてこなかったようで、薫ちゃんは冷ましながら珈琲を飲み始めた。

「おい、俺のは?」

「笠井君のはありませーん。自分で淹れてきてください」

「ったく……」

付き合い始めたとは思えない相変わらずなふたり。でも笠井君は席を立ち、ミーティングルームを出る際、薫ちゃんの頭をコツンとした。

途端に薫ちゃんは顔を真っ赤にさせる。

ふたりのやり取りを目の当たりにして、こっちが照れ臭くなる。あぁ、本当に付き合っているんだって小さなやり取りで感じたから。

でもふたりが仕事には支障をきたさないと決めたなら、しばらくは内緒にしておくつもりなんだよね。

だったら私も気づかないふりをして、静かに見守ろう。

薫ちゃんが淹れてくれた美味しい珈琲を飲みながらそう心に決めた。


お昼近くにチェックを終え、三人ともグンと身体を伸ばして疲れを取る。数点間違いを見つけ、修正を済ませた。あとはこれを入稿すればいいだけ。
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