溺愛診察室~一途な外科医に甘く迫られています~
「今度は佐野先輩の番ですよ。……頑張ってください」

「笠井君……」

こちらを見ることなく送られた彼らしい不器用なエールに、心があたたかくなる。

誰かを好きになったことはあるけれど、両想いになったことは一度もない。……どんな気持ちなんだろう。でもこれだけは言える。

笠井君のように誰だ見ても幸せそうって思えるくらい、幸せな気持ちになれちゃうんだろうな。

ふと佐々木君の笑顔が頭に浮かんだ。

不思議と彼に会いたくなる。そう思っちゃうのは、やっぱり私はもう既に佐々木君のことが好きなのかもしれない。

今度、仕事が落ち着いて彩音が帰ったら佐々木君に会って、もっと色々な話をしよう。

家族の話はもちろん、他にもたくさんと。

「お待たせしましたー! 環奈先輩、美味しい珈琲を淹れてきましたよ!」

元気よくミーティングルームに入ってきた薫ちゃんの手には、カップがふたつ。

「ありがとう」

「どうしたしまして」

ひとつは私に渡してくれて、もうひとつを手にしたまま彼女は椅子に腰かけた。

「さぁ、飲みましょう」

とは言われるものの、一緒にいる笠井君のことが気になる。
< 164 / 279 >

この作品をシェア

pagetop